薬学生・薬剤師向けにキャリアコーチをしている川瀬 佑紀さん。自分の個性を受け入れ、オープンにすることで、自分らしく働ける組織になると言います。
川瀬さんは、薬学生・薬剤師のためならどんなことも一緒に取り組むエネルギーの持ち主。そんな川瀬さんに、現在キャリアコーチとして行っている取り組みや、大切にしている想いを伺いました。
■プロフィール
川瀬 佑紀
薬科大学卒業後、製薬会社に入社。4年半従事したのち、病院薬剤師を1年、薬局薬剤師を2年経験。薬局薬剤師2年目でストレングスファインダーに出会い、自身もGallup認定ストレングスコーチを取得。現在は、薬学業界に特化したキャリアコーチを行う。
薬剤師が「自分らしく働ける場所」を見つけるため、選択肢の幅を広げる
ー薬学生さん・薬剤師さんに対し、どのような取り組みをしているのでしょうか?
薬学生さん・薬剤師さんに向き合い、現状の悩みやモヤモヤを一緒に解決する取り組みをしています。
「楽しかったこと」や「つらかったこと」を伺い、再度言語化することで、自分自身の理解が深まるのです。そして、「理想の未来」と「現在地」を知り、そのギャップを埋めるために何ができるかを考えていただきます。
薬学生さんや薬剤師さんとお話する上で、「もっと自己分析をしてみたい!」という方がいらっしゃれば、『ストレングスファインダー(※次章で説明)』というツールを使用して、自己理解のお手伝いもしています。
ーなぜこのような取り組みをしようと思ったのでしょうか?
薬剤師は、病院・調剤薬局・ドラッグストアなどさまざまな場所で活躍できますが、就活の際「うちで働きませんか?」と声がかかることが多いんです。そのため、薬剤師の就職活動は一般的な就職活動と異なり、何社も比較する機会がほとんどありません。
つまり、薬学生は就職先の選択肢が狭いまま就職してしまうことになります。だからこそ、就職前や就職後に「これでいいのかな……」という不安が出てきてしまうのです。
そこで私は、就職・転職前に選択肢を広げ、「自分らしく活躍できる場所を見つけてほしい」という想いから、自らが納得して就職先を決断できるサポートをすることにしました。
薬剤師こそ、ストレングスファインダーを受けるべき
ー自己分析ができる『ストレングスファインダー』とは、どのようなツールなのでしょうか?
簡単に言うと、「自分が持つ当たり前の才能に気付けるツール」です。
たとえば、「あなたはいつから右利きでしたか?」と聞かれても、回答に困りますよね。才能も同じで、普段から当たり前に使っているため、自分自身では気付きにくいと言われています。
ストレングスファインダーを受けると才能が見える化され、「自分の価値が分からない」という方でも才能をしっかり受け入れられるのです。
ー薬学生さん・薬剤師さんがストレングスファインダーを受けることで得られるメリットを教えてください。
薬学生さん・薬剤師さんがストレングスファインダーを受けるメリットは「自分らしい薬剤師の在り方」を見つけられる点です。
ひとくちに薬剤師と言っても、人それぞれやりがいを感じる瞬間や、楽しさを感じる瞬間は違います。そのため、「薬剤師だからこうあるべき」という考え方では、苦しくなることもあるでしょう。
だからこそ、薬剤師さん一人ひとりのやりがいを才能レベルで知り、「働くが楽しい」を実現したいのです。
薬剤師のみなさんは「人の役に立ちたい」という想いが強い方ばかり。ですので、その気持ちを自分自身で受け入れ、言語化していただくと、よりよい組織になるでしょう。
理想の未来を叶えるお手伝いを、全力で。
ー薬学生さん・薬剤師さんとお話する上で大切にしていることはありますか?
薬学生さん・薬剤師さんに対し、何ができるかを全力で考えています。一人ひとりが何を求めているのかを丁寧に聞いたうえで、できることがあれば全力でお手伝いさせていただきます。
たとえば、私自身の人脈を活かしてMRの友達を紹介したり、薬剤師さんを紹介したり。また、病院薬剤師さんをたくさん集めて座談会を開催することや、企業の社長さんに協力してもらいインターンシップを開催することもあります。
私自身が人との出会いを大切にしているので、薬学業界の方はもちろん、薬学業界以外の方との輪が広がっています。そのため、一人ひとりの個性に応じて最適な人やイベントをお繋できますし、純粋にお繋することが好きなんです。
このように、みなさんの個性に応じて、自分にできることがあれば何でもお手伝いします。その結果、薬学生さんや薬剤師さんの選択肢が広がるのであれば、これ以上に嬉しいことはありません。
みなさんの貴重なお時間を無駄にしたくないですし、少しでも僕と話して良かったと思っていただきたい。そして、みなさんの理想の未来に繋がる一歩になりますように……。そう願いながら、お話させていただいています。
薬剤師は“国が定める仕事”以外にも、たくさんのことができる
ー川瀬さんが実際に薬学生さん・薬剤師さんとお話をして、理想の未来に繋がった事例があれば教えてください。
実際にお話して、少しでも理想の未来に繋がった例はたくさんあるのですが、今回は厳選して4人の例を紹介します。
- 強みを活かしたイベント企画が実績となり、憧れの経営者と働くことに
- 薬剤師でありながら「やりたいこと」を叶えられる薬局に入社
- 採用担当を担う薬剤師さんが一歩踏み出せた
- 話しているうちにモヤモヤが解消された薬剤師さん
この事例をご覧いただき、「薬剤師として活躍しながらも、一人ひとりの強み・やりたいことに合わせたキャリアが選択できること」を知っていただきたいです!
事例①強みを活かしたイベント企画が実績となり、尊敬する経営者の元で経営を学ぶことに
事例①
地元で薬局を経営したいという学生さんがいらっしゃったので、薬局の経営者を紹介させていただきました。すると、「社長になるためには人脈が必要」とアドバイスをもらったそう。そこで、学生さんから「人脈を作るためにはどうしたらいいですか?」と質問いただいたので、薬学生同士の交流会を開催することを提案しました。
イベントを行うためには企画・集客・運営などが必要になりますが、初めての集客でやり方がわからずにモチベーションが落ちていました。そこで、ストレングスファインダーを活用してお話したところ、「自分だけの強みを活かした集客」が明確になったのです。
実際に強みを活用して集客した結果、約20名の薬学生が集まり、イベントは無事に成功。この経験から火が付いた学生さんは、さらに内容をバージョンアップさせ、薬学生だけでなく薬剤師を招いたイベントも見事成功させました。その際の参加者は30名となり、自分の強みを活かした実績を作り出したのです。
さらに、1回目のイベントで上手く輪に入れなかった薬学生の意見をヒアリングし、席順を戦略的に考えるなどの工夫も取り入れました。その結果、すべての薬学生が楽しめるイベントへとアップデートされたのです。
この実績を尊敬する経営者にプレゼンし、社内だけでなく「地域NO.1」を目指す薬局への就職が決まりました。学生さんはいずれ独立することも伝えているため、経営全般を教えてもらうこととなったのです。
- 包含
- 達成欲
- 戦略性
- 社交性
- 共感性
事例②薬剤師でありながら、「やりたいこと」を叶えられる薬局に入社
事例②
ある学生さんは、「薬剤師よりも深く人と関わりたい」という想いから、はじめは製薬会社での営業を考えていました。そこで、関西の経営者を紹介させていただいたところ、「在宅医療」という選択肢があることに気が付いたのです。
在宅医療なら、薬剤師として患者さんとの人間関係を深められる。さらに多職種との信頼関係を築くためのコミュニケーションなど、営業に近い要素も経験ができる……。経営者のお話から「在宅医療」に深く感心を抱いた学生さんは、なんと九州から、その経営者が営む関西の薬局に就職を決めました。
「薬剤師として活躍しながら、一流のビジネスマンとしての力をつけること」が叶えられたため、非常に嬉しく思います。
- コミュニケーション
- 適応性
- 社交性
- 活発性
- アレンジ
事例③採用担当を担う薬剤師さんが、一歩踏み出す決断をした
事例③
薬剤師として採用担当をしていた方は、自分自身の信念があるものの、社長がどう考えているか分からずモヤモヤを抱えていました。そこで、ストレングスファインダーを用いて薬剤師さんの「理想」を伺ったところ、「やはり社長に直接聞かなければ進まない」と感じたそう。
その結果、初めて社長さんと2人でお話しする機会を設けることができ、その薬剤師さんは着実に一歩踏み出せたのです。
薬剤師さんとお話しする中で、「なぜ社長さんにお話できないと思っているのか」をひも解いていった結果、薬剤師さんが持っている才能が強く出過ぎてしまっていたためだと分かりました。このように日頃のモヤモヤを伺い、少しでも踏み出せる勇気が持てる時間になれば嬉しいです。
- 親密性
- 共感性
- 適応性
- 運命思考
- 慎重さ
事例④話しているうちにモヤモヤが解消された薬剤師さん
事例④
ある薬剤師さんとお話していたときのこと。お話が始まってから「いつもと様子が違う」と違和感を感じた日がありました。そこで何があったのかを聞いてみると、「仕事で自信を無くしていたため、自分の話をしたくなかった」との返答があったんです。
そこで、仕事が進まなくなったきっかけや、モチベーションが下がった理由を伺ったところ、話が終わるころにはいつもの明るい笑顔が戻っていました。お話をした後は、いつも通り仕事の生産性が上がり、いきいきと働けるようになったそうです。
モヤモヤを言語化するだけでも、「なぜモヤモヤしているのか」「本当はどうしたいのか」が明確になるため、さらなる一歩を踏み出すことができるのです。
- 未来志向
- 目標思考
- 達成欲
- 最上志向
- 着想
薬学業界と医療業界の境界線を無くし、同じ志を持つ仲間を増やしたい
ー今後の展望を教えてください!
まずは、個性を活かして自分らしい職業を選択できる薬学生さん・薬剤師さんを増やしたいです。そして、薬剤師さん同士が個性をオープンにし、才能を活かせる薬学業界になったら最高ですね。
さらに、個性を活かした組織作りを医療業界にも広げたいと考えています。お互いの個性を見える化することで、「薬剤師」「看護師」「医師」の境界線がなくなり、患者さんにより一層良いものを提供できるようになるはずです。
薬学業界と医療業界の境界線を無くし、みんなが一丸となって患者さんに向き合う。私は、そんな想いを持った仲間を増やしたいのです。このビジョンを実現するため、みなさんと全力で向き合い続けます。
まずは自分自身を知り、個性・才能を共有しよう
ー最後に、薬学生さん・薬剤師さんにメッセージをお願いします。
薬剤師は資格を取ってゴールではなく、資格を取ってからがスタート。そのため、「就職後どうなりたいのか」を明確にすることが重要です。
だからこそ、まずは自分自身を知り、その上で個性を共有することが大切になります。「自分らしく働ける場所」を見つけ、一緒に楽しい薬学業界・医療業界を作っていきましょう!
この記事をご覧になり、少しでもモヤモヤを解消したいと思った方は、Xよりお気軽にご連絡ください!